私の長い長いアリアンロッドサガが終わった話

ただのなぐり書き。

アリアンロッド・サガと呼ばれるシリーズがある。
F.E.A.R社の刊行するTRPGアリアンロッド」の、2008年からスタートしたリプレイやノベルなどのシリーズだ。

通常のアリアンロッドはプレイヤーはエリンディル大陸で冒険者になるが、サガは戦争の尽きないアルディオン大陸という新大陸(当時)で傭兵や兵士などになる。
ガリプレイ最大の特徴は大規模なクロスオーバーで、リプレイだけで10種43冊(オーバーキルも含めると11種44冊)、ノベライズ2種6冊、ファンブック3冊、コミカライズ2冊、コミックアンソロジー2冊という、TRPGリプレイとしては異例の超大規模連載&クロスオーバー作品だ。

連載開始当時、私は高校生だった。
小遣いなどの都合全シリーズは買っておらず、メインストーリーをなぞれるよう考えて購入していたのも今ではいい思い出だ。

さて、リプレイ43冊ともなると通常のリプレイのように2年そこそこでは完結せず、サガシリーズは完結までに5年半かかった。(クロスオーバーで並行してリプレイ収録・執筆されていたのでこれでも刊行ペースはものすごく早い)

リプレイ33・34冊目のデスマーチ7巻・8巻はゲッタウェイというシリーズとの直接クロスオーバーで、プレイヤーをミックスしてストーリーが進行する。
当時私はこのゲッタウェイを読んでいなかった。
デスマーチ7巻を途中まで読んだところで、「あ、これゲッタウェイ読んでないとあかんやつか」と気づき、
しかしすでに3巻刊行されているゲッタウェイの1巻は、普段利用している書店にはもう並んでいなかった。

すでに高校を卒業し大学生。ちょうどこの頃に私生活が忙しくなり、ここで私は一度サガシリーズを追うのをやめてしまった。
一人暮らしを始める際の引っ越しでリプレイ本の類はすべて実家においてきてしまったため、数年ほどサガシリーズについては思考に登ることすらなかった。


結婚後の引っ越しで大型の本棚を購入した。
リプレイ本も手元に置いておきたいと、実家から運んだ。本棚が半分リプレイ本になった。
サガシリーズを多分10年ぶりくらいに目にし、これどうなったのかなーと調べたところ、リプレイは43冊で完結していた。
その時はイフやイェーガーは持っていなかったものの多分30冊くらい手元にあり、
「これくらいなら今からでも全部揃えられる!」と思い立ってイエサブの見切りコーナーを買いあさり、ジュンク堂の在庫を購入し、どうしても新刊で見つからないものは仕方なく中古で購入した。
電子書籍もあったが、残り10冊くらいなら物理書で欲しかったのだ。


ゲッタウェイを持っていないからデスマーチの7巻で止まっていたところまでは覚えていた。
私は記憶力がいいのである。
ということでゲッタウェイの1巻から読む。

うむ、内容が全くわからない。
私の記憶力なんてそんなものである。

仕方なく1巻から読み始めた。
無印の1巻から。

先程も言ったが、デスマーチの7巻はリプレイの33冊目であり、つまり33冊読み直すことになった。
今回は社会人の財力でファンブックもノベライズもコミカライズもすべて購入しており、全シリーズを刊行順に並べて端から読んだので、実際には42冊くらい読んだ。

途中妊娠出産で読書ペースを激落ちさせつつも、1年半ほどかけて、
昨日、最終巻を読み終わった。



感想、と聞かれるととても困る。
あえて言うなら、この終わり方の後では、当時の私ではGM参戦はできなかっただろうということだ。
明確な暗躍組織が瓦解し純粋な人間同士の戦記になってしまうと、私の思考キャパを超えてしまう。
ピアニィが地上に戻る選択をしたのなら、おそらく妖魔の跋扈する世界に帰還し「俺たちの戦いはこれからだEND」になったと思われるので、そちらの方が色々とこう、わかりやすくやりやすい。

だけどあのエンディングのほうが、きっと「終わった」という感慨をもって読み終えられる。
綺麗に終わった。きっとこれからは新しい時代が幕を開ける。そこに彼女と彼はいないけれど。

デスマーチが好きだった。だってまず出だしの会話が最高だった。ギィが特に好きだ。斜に構えて、でも情に厚い彼の照れ隠しのような言動がずっと好きだった。
エチュードが好きだった。クロスオーバーが大規模過ぎて、刊行ペースも早すぎて世界が目まぐるしく変わり続けるサガにおいて、こういった内容なら私もGMができそうだと素直に思えた。
何より無印が好きだった。アルとピアニィの恋路をずっと応援していた。ナヴァールの行く末も、ベネットの破天荒な行動も大好きだった。
だからそっと悠久のラストクイーンを閉じて、すべてのリプレイを刊行日順という知らない人が見たら「ちゃんと整頓しなさい」と言いたくなるような見た目で本棚に並べ直して、本棚の前でこう言うのだ。

終わったなぁ、と。



サガを読んでいなかった10年間は、そのままTRPGから離れた10年間だった。
厳密にはクトゥルフダブルクロスなどを単発では遊んでいたのだけど、リプレイは追わなくなり、サプリメントもスキルガイドや改訂版購入以外では購入しなかった。

最近、改めて書店の本棚を覗いた。
私の読んでいた頃はリプレイ発行の最盛期だったため棚が広かったが、今では随分と縮小した。毎月のように新刊島にあったリプレイ本は姿を消している。リプレイそのものは、カクヨムなどでの連載になったものもあるようだ。

ウェブラジオのふぃあ通が最終回を迎え、YouTubeにて新たに発信しているらしい。

10年一世代と言うが、本当に世代が変わったのだと思う。
ずっとTRPGを、FEARを追いかけてきている人たちにとっては、きっとゆっくりと10年かけて変わったことなのだろう。
新しく始める人たちにとっては、今の状態が当たり前のことなのだろう。
少しばかり浦島太郎な私は、ピアニィの不思議なオルゴールを閉じて本棚の一番後ろに差し戻して、そしてやっぱりこう言うのだ。

終わったなぁ、と。


今までと違う、おそらく新しい風が吹いている。
その風は柔らかくておおらかで。
だけどその風を受けるには、私は少しばかり、薄着なようだ。